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vol.2 宮下 実

地球環境を考えるきっかけを提供

天王寺動物園は、100年近く多くの方から愛されてきましたが、実は最近十数年間で大きなリニューアルを行っています。「アフリカサバンナ」「アジアの熱帯雨林」という動物の住んでいる環境をそのまま見ていただける新しい展示エリアを作りました。昔は金網や鉄格子の向こうに動物がいて、地面もコンクリートが多かった。それを土や草に変え、金網を取り払って、植物、水の流れを利用して、野生に近い環境を整えました。こういう展示を始めたのは、実は日本で私どもが初めてなんですよ。アフリカ、アジアに続いて今後も地球上のさまざまな環境を見ていただけるようにしたいと思っています。

今一番考えていることは"地域との連携"です。今年から小学校の子どもたちが、月に1~2回来て、園内にいろんな野菜を植えて育てているんです。ニンジン、カボチャ、サツマイモ、ゴーヤなど。これは園内緑化の一環なんですが、その肥料にはアジアゾウの糞から作った有機堆肥を利用して、そこでできた収穫の一部がまた象の餌になったりしています。子どもたちに緑の大切さとともに、食物リサイクルの実際を体験してもらって、環境のことを考えるきっかけにしてもらっています。

街を歩くようになって、アベノ・天王寺の魅力を再発見しました

私はこの天王寺生まれなのです。子どもの頃は百貨店の屋上や、公園が遊び場でした。その頃から昆虫が大好きでした。ファーブルに憧れてね。夏休みは網を持って走り回っていました。そして昆虫から動物へと興味が移って、現在に至るというところでしょうか。

最近、このあたりをよく歩くようになったのですよ。実は「大阪検定」に挑戦しようと思いましてね、教科書片手に大阪をずいぶん歩きました。歩くとね、街のことがよくわかるんです。天王寺にはいいお店がいっぱいあるんですよ。食事をしてみたい、一杯飲みたいなぁと思うお店が。一軒一軒個性があって、手書きの看板なんかがとてもよくって! つい寄りたくなる、これこそが大阪の下町ですね。

そうかと思うと公園の裏手あたりに老舗の料亭があります。風情のあるいいお店です。また、アベノから路面電車に乗ると街並みの変化がよくわかります。高級住宅地から、にぎやかな繁華街へとほんの少しの間でどんどん雰囲気が変っていきます。繁華街でありながら、緑が多いのもほかの街にはないアベノ・天王寺の魅力。まさに大阪のよさが集約された街だと思います。

≪動物園開園秘話≫

大正4年の動物園開園にあたって、動物のほとんどを府立大阪博物場(当時)から譲り受けることになりました。動物の移動は檻に入れて牛車や大八車で運搬しましたが、象だけが松屋町筋を歩いて引っ越してきたとのこと。当時の松屋町筋は幅員5.4mと細かったので、象が歩いたら道は一杯!鼻で悪戯し軒先を壊したり、さらには道のあちらこちらに糞を落としたり…。そこで、それを直す大工さんや糞を清掃する人を連れて歩いてきたとか。




【プロフィール】
1950年生まれ、獣医師、医学博士、学芸員。1973年、大阪府立大学卒業と同時に天王寺動物園に獣医師として就職。2005年に動物園長就任。大阪市立大学医学部で線虫類の研究を行い1993年に「アライグマ蛔虫の幼虫移行症に関する研究」学位取得。米国、ヨーロッパ、アジア、アフリカなど20カ国 50を超える海外の動物園視察とボルネオ、マダガスカル、タスマニア、ネパール、ケニア、ニュージーランドなどの野生動物保護区、国立公園も多数視察。日本動物園水族館協会理事、日本野生動物医学会評議員、動物臨床医学会編集委員などを務める。著書に『外来種ハンドブック』(地人書館:共著)、『原色ワイド図鑑 動物』 (学研:共著)、『写真集・天王寺動物園』(東方出版:解説)他多数。

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